EARTH & PLANETARY SYSTEM SCIENCE LAB
Home
research
people
contributions
Contact
ENGLISH
太陽が現在より20~30%暗かったにもかかわらず、太古代の地球が現在と同じかそれ以上に温暖であったという問題(“暗い太陽のパラドックス
”)は、半世紀近くにわたって地球惑星科学分野における重要な未解明問題のひとつとされています.私たちは、太古代において地球の気候が温暖に保たれていたことを定量的に説明可能なまったく新しいメカニズムの存在を、数値モデルを用いて明らかにしました.それは、水素と鉄という異なる元素を利用する複数種の光合成細菌が「共存」する生態系を想定すると、強い温室効果気体であるメタンが大気中で高濃度に維持されて温暖気候が形成される、というものです.光合成細菌の多様性によって温暖な地球環境が維持されていたとするこの新しい知見によって、暗い太陽のパラドックスは解決できます.鉄や水素などそれ自体は温室効果を持たない物質の循環が、酸素が存在しない環境下にある惑星の気候状態を決定するという今回の知見に基づき、今後、初期地球環境の安定化メカニズムや系外地球型惑星気候と生命存在可能性の解明などへの展開が期待できる.
図1.
太陽進化の標準モデルによると、太古代の太陽光度は現在よりも20~30%低かったと推定されている。一方、地質学的研究からは、太古代の地球は現在と同程度(~15℃)かより温暖(60~80℃)な気候状態であったと推定されている。低い日射条件にもかかわらず、いったいどのようにして地球環境は温暖で「ハビタブルな」(生命存在に適した)状態に維持されていたのか?この問題は、“暗い太陽のパラドックス”とよばれ、地球惑星科学分野における重要な未解明問題となっている。このパラドックスの一般的な理解は、過去の地球大気中には大量の二酸化炭素が含まれていて、その温室効果によって低い日射量の影響が相殺されていた、というものであろう。しかし地球化学的推定によれば、30~22億年前の大気二酸化炭素濃度は、理論的に要求されている濃度よりも低い傾向があり、二酸化炭素のみでは暗い太陽のパラドックスを解決できないことが指摘されている。そこで、二酸化炭素に加えてメタンが重要な役割を果たしていたのではないかと考えられている。温暖気候の形成に二酸化炭素やメタンがどの程度必要になるのかについての推定は行われているが、大気中の温室効果気体の濃度は、メタン生成など生物の代謝過程や大気光化学反応ならびに地球表層の地球化学過程を含む生物地球化学的物質循環によって規定されているため、そのフレームワークの中で定量的に説明できない限り、暗い太陽のパラドックスを完全に解決したことにはならない。しかしこれまで、そのような研究はほとんどなかった。
私たちの研究グループは、温室効果気体であるメタンの存在量を規定する物質循環に注目した(図1)。
Home
research
people
contributions
Contact
ENGLISH